瀬戸黒の焼かれた短い期間のうち最も円熟した時期に生まれた茶碗で、瀬戸黒茶碗の中では、腰部が口径よりやや大きい部類のものである。
土は細やかで良質なものが使用され、轆轤使いの確かな技と優れた釉調とが相まって端正で安定した器形を見せている。
高台は側面からは見えないほどに低く、三ミリほどの高さで削り出されている。
底部の周囲は箆彫りで整えられ高台を中心に同心円状に巧みに整形されている。
茶碗見込には浅い茶溜りがつけられ、一見単調に見える胴廻も胴中央部に深く一条の轆轤目を巡らせ、また指跡や鋏跡などが景色となって強い印象を醸し出している。
釉薬は良く溶けて光沢があり内に点々と赤味もみえる。
高台周辺に見られる白土は柔らかで、全体的に作行きの大らかな伝世の瀬戸黒茶碗である。
【参考】瀬戸黒
桃山時代に美濃の大窯で焼かれた引出黒の技法による焼き物。(茶碗)
製作時期は16世紀後葉から17世紀初頭で、美濃の桃山陶の中では、志野よりも早く、黄瀬戸と同じ時期に作られており、器種としては、黄瀬戸が食器を中心としたのに対し、瀬戸黒は、ほぼ茶碗のみであった。引出黒の茶碗としては、慶長年間(1596~1615)以降、歪みが顕著となったものは織部黒、さらに窓絵という区画を作って鉄絵を加えたものえを、黒織部とし、瀬戸黒とは区別して織部焼に含めている。
美濃以外で引出し黒の技法で作られた黒茶碗には、長次郎の楽焼と楽焼系の軟質施釉陶の黒楽がある。
古瀬戸黒茶碗
SKU: 0010
¥800,000価格
時代 桃山時代
口径 11.5cm
高さ 9.0cm
高台径 7.0cm
付属品 時代桐箱
その他 縮緬仕覆・更紗包布付き