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宗易形の黒楽茶碗で、如何にも侘茶にふさわしい内包的な姿で、胴裾は丸くたおやかな姿をしており、口部を僅かに内に抱え込ませ、胴部には三筋の水平で浅く箆彫りを、口縁下と胴央それに胴央やや下に間をあけて施しており、口縁に罹った鋏痕と共に僅かに景色をなしている。


見込は深く、底に茶溜りを施している。底の肉取りが厚いためか手取りはやや重く感じる。
厚く掛かった釉膚は長次郎には珍しく枷ぎみではあるがやや光沢があり、総体に細かな柚子肌となっている。高台は小振りで丸く、高台内は巴で兜巾が立ち、高台際は切込み深く、畳付には三つの目跡が残る。

 

「銘 菓父」の意味として、菓子の神、菓祖または柑橘の祖神ということがあり、この神に田道間守(タジマモリ、天日鉾の玄孫)をあて、各地の神社でお祭りをしている。
本茶碗もこの橘(タチバナ)にも見える事から、発想されるのではと考えられる。

 

【参考】長次郎茶碗
侘の茶の大成者で、その頂点に立つ茶人は千利休(1522~91)であり、長次郎の茶碗は、この利休の侘の茶の理想を投影した「草の小座敷」にふさわしい茶碗として生まれたものと言えよう。
この意味で、長次郎茶碗は桃山陶のあり方の一つの傾向を代表するものといってよく、器の中に精神的・理念的なものが意識的に投影された優れた例であり、また、茶匠と陶工との共同作業による造形の分明な一例といえる。

 

長次郎茶碗はいずれも手捏ねであるという点は、利休の茶風から言って非常に重要な意味があり、利休好の長次郎茶碗「宗易形」の作例の大黒・一文字・無一物の様な作為の少ない端正な形のもので、室町後期以来の半筒の形式を踏まえつつ手捏ねで新しい味わいを盛り込んでいる。
その製作時期は天正十四年前後であり、長次郎茶碗の登場時期は天正七、八年頃と考えられる。

長次郎 黒茶碗「銘 菓父」

SKU: 0012
¥850,000価格
  • 時代        桃山時代
    口径        10.3cm
    高さ        8.5cm
    高台径        4.3cm
    付属品        内箱:表七代如心斎/外箱:表十一代碌々斎
    その他        時代布仕覆・更紗包布

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